システムに関する契約法務のご案内

システム開発契約においては、案件等に応じて、様々な契約方式が存在します。
例えば、基本契約を締結した後で各開発フェーズに応じた個別契約を締結するという、基本/個別契約方式は、システム開発の契約において多く見られる契約方式です。
他方、基本契約は締結しないものの、各開発フェーズごとに、例えば、まずは要件定義フェーズのみ契約する等、スポットで契約を締結する場合もしばしば見受けられるところです。

特にここ最近、顧問契約を締結いただいているクライアント様から、要件定義フェーズ等の上流工程の支援業務に関する契約書雛形のご提供や、案件に応じた雛形の加筆修正等をよくご依頼いただいております。
私は、システム開発分野ばかり取り扱っている弁護士ということもあり、そのような上流工程における契約書雛形も保有しておりますので、速やかな契約書雛形のご提供や、案件に応じた契約書作成等も可能となっております。
もちろん、要件定義支援業務特有の事項を反映した契約書雛形となっておりますので、要件定義支援業務の委託契約書のご提供は、スピード感も含め、顧問先クライアント様からもご好評いただいております。

 

it-vendor-law.com

私は、このブログでも繰り返し述べるところではございますが、システム開発等を中心に取り扱っている弁護士でして、特に顧問契約を締結いただいているクライアントからのご依頼で、システムに関する契約書の作成やチェックも日常的に行っております。
契約書がなかったり、インターネット上でダウンロードできる契約書雛形がそのまま流用できない場面でも流用してしまったりした結果、トラブルに発展してしまったり、トラブルが発生した際に不利益を被る結果となってしまったりすることが少なくありません。
システム開発等はトラブルの多い分野でもありますので、他の分野以上に、契約書の作成やチェックを行う必要があると考えております。

ご興味のある方は、ぜひお気軽に、上記のWebサイトからお問い合わせください。

「法律専門家のためのWebAssembly」

www.publickey1.jp

www.linuxfoundation.jp

RSSフィードを購読していたPublickeyから、Linux Foundationが法律専門家向けにWebAssemblyに関するドキュメントを公開した、という情報を受けて(しかも日本語版がある!)、朝からこれを読んでおりました。
Linux Foundation JPのTwitterを見ると、どうやらもっと前にドキュメントとしては公開されていたようですね。

読んでいたところ、それなりに知識のある方でないとほぼ理解できないのでは、というのが率直な感想でして、ここでいう「法律専門家」の層は一体どこなのか……?、と素朴に思ってしまいました。
ですので、法律専門家向けというよりは、エンジニア向けに、WebAssemblyを題材に、「OSSライセンスを利用する際はどのようにしてライセンス条項を遵守していけばよいか」という点について理解を深めさせるようなドキュメントと位置づけたほうが、多くの場合では適切ではないかとも思われます。
他方で、社内の法務部門でOSSの利用可否や利用方法等について確認をしている場合においては、法務部門が理解しておくべき点が記載されているとは思いました。

梧桐彰著『小さな企業がすぐにできるセキュリティ入門』

gihyo.jp

発売されるとの情報を某SNSで得て、発売直後あたりに買っていましたが、やっと目を通すことができました。

ITや情報セキュリティに関する知識の(あまり)ない方が初めて読む情報セキュリティに関する書籍として、おすすめできるのではないかと思います。

全体的に平易な文章で書かれていますし、読み進める上で登場する語句についてもできるだけわかりやすく表記された解説が加えられています。
ポジショントーク色が強いと感じる部分もありましたが、想定される読者層を考えるとそれはそれでありだとも思いました。
「小さな企業がすぐにできるセキュリティ」という、タイトルのとおりの書籍ではないでしょうか。

ただ1点、私なりのポジショントークの側面も含んでいるのですが、「法律関係の問題になりそうな場合には法テラスに相談を」という旨の記載がありまして……。
色々言いたいことはありますが、一番重要な点だけ述べておくと、(あくまで個人的な認識ではありますが)弁護士でも少なくない方が本書が対象とする読者層に該当するかと思いますので、万一そのような問題が生じた場合には、情報セキュリティに関する知識のある弁護士を探すべきだと思います。

松田世理奈外3名著『契約解消の法律実務』

www.biz-book.jp

阿部・井窪・片山法律事務所の弁護士が書いた契約解消の場面に関する書籍ということで、内容に関する情報を把握しないまま「おもしろそう」と思って買ったような記憶です。
前記リンク先の出版社公式通販サイトにも目次等の情報がないのですが、売買契約や継続的契約等のほか、システム開発契約、AI開発契約といった、IT分野における契約に関する記載もそれぞれありましたので、ここでご紹介しようかと思います。

内容としましては、全2章に分けられており、第1章では契約終了に関する総論的な内容が、第2章では各契約に応じたケーススタディ的な内容が、それぞれ記載されています。

第1章

第1章においては、まず、契約終了には①解除、②期間満了、③合意による終了、④一時的な停止の4つのパターンがあるとした上で、それぞれのパターンに関する説明が行われています。
また、これらの契約終了の根拠として、①契約、②法律、③その他の終了原因、④合意の4つが挙げられるとした上で、それぞれの根拠の具体的な内容について、その説明が行われています。
(個人的に、③の「その他の終了原因」は、見出しとしてわかりにくいなと思いましたが、内容を読むと、②は民法541条ないし543条に基づく解除のみを指し、③はそれ以外の民法641条に基づく解除等を指すということのようです。)
その上で、契約終了の効果について、①遡及効、②将来効、③その他を挙げ、例えばどのような場合に遡及効が生じるのか、遡及効が生じるとどうなるのか、といった説明が行われています。

ここまでは比較的理論的な話がメインでしたが、その後、実務的な話へと内容が移っていきます。
例えば、契約終了を実際に検討する場合においては、「何のために契約を終了したいのか(達成目標はなにか)」、「その根拠として考えられるものはあるか」、「その根拠に基づいて実際に解除できるといえるか(=要件を充たすか、立証可能性はあるか)」、といった視点からの検討が有用と述べられています。
また、訴訟提起を視野に入れる場合には、①相手との関係性、②訴訟コスト、③レピュテーションリスクといった点も考慮要素となる、とも述べられています。
(その他、ここでは紹介しませんが、契約解除通知書等の作成のポイント等に関する説明がなされています。)

このように、理論面のみではなく、実務的な検討プロセス、考慮要素等が記載されているため、有資格者かどうかを問わず、契約終了について検討する場合には、本書の記載が大きな助けになるのではないでしょうか。

第2章

続く第2章は各契約類型におけるケーススタディですが、そのうちシステム開発契約に関する部分のみ、ご紹介したいと思います。

システム開発契約におけるモデルケースは、平たく言えば、「要件定義フェーズ終了直前に要件定義書から必要な機能が漏れていると判明したため、ベンダーが当該機能の開発は追加開発となる旨を説明したところ、ユーザーが報酬支払を止めつつ開発中止を求めたため、PJが頓挫しそうな状態にある」といったケースです。
(「あるある……」と思いました。実際、このようなケースのご相談は、ユーザーかベンダーかを問わず非常に多いです。)

このケースを検討する上で、システム開発に関する契約の前提知識として、①システム開発契約の法的性質(請負、準委任や一括契約、多段階契約)、②ベンダーの数による違い(シングルベンダー、マルチベンダー等)、③開発方式(ウォーターフォール開発におけるVモデルの説明がほとんどです)、④開発手法(スクラッチ、パッケージ)といった事項が簡単に説明されるほか、⑤IBMvsスルガ銀行の東京高裁判決の概要、判決のポイント(PM義務、協力義務)について説明がなされています。
書籍のコンセプト上の都合だと思われますが、システム開発契約やIBMvsスルガ銀行東京高裁判決については、他に詳しく触れている書籍が複数ありますので、あくまでモデルケースについて理解するための最低限の知識を得るため、と割り切って読んだほうがよいと感じました。
(その意味では、非常にコンパクトにまとまっているのではないかと思います。)

そして、モデルケースを踏まえ、①具体的にどのような点を検討すべきか(契約に基づき解除ができるか、法律に基づく解除ができるか等)、②具体的にどう解決に向かって動いていけばよいか(交渉の主体を誰にするか等)、③トラブルを避けるために契約書作成時はどうすればよかったのか、という点について、それぞれ解説がなされています。
特にベンダーとしては、システム開発事業を行う以上、後に同様のトラブルが生じないように対策を行うことが重要ですので、契約書作成時に注意すべきポイントについて触れられているのは非常によい点だと思われます。

実際問題として、十分にノウハウがあるような場合を除けば、社内でこれら3つの点を十分に検討するということは難しいと思います(そのため、顧問弁護士等の外部弁護士に相談する、ということが重要です。)。
もっとも、システム開発だけ見ても、モデルケースのようなケースはよくありますし、そのような場面で何を検討しなければならないのか、という点だけでも把握しておくことには大きな意味があると思いますので、本書をご紹介することとした次第です。

続・フリーランス向けの下請法改正(?)について

it-lawyer.hatenablog.com

先日、日経新聞の報道を受けて、前記エントリを書いたわけですが、2022年9月13日、パブコメの募集が開始されています。
(9月27日までパブコメの受付がされています。)

「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」に関する意見募集について|e-Govパブリック・コメント

さて、「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」(以下「方向性」)を見るに、フリーランスの定義が「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」でなされた定義と異なるのかどうかははっきりしません。

また、「方向性」には、「フリーランスの取引を適正化し、個人がフリーランスとして安定的に働くことのできる環境を整備する」「他人を使用する事業者……が、フリーランス……に業務を委託する際の順守事項等を定める」とあります。
これらの記載から、今回整備される法制度は、事業者間において下請関係がない場合にも適用されることが前提とされているように見受けられます。

そのほか、「方向性」には、「ハラスメント対策」や「出産・育児・介護との両立への配慮」も、就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項として記載されています。
これらは、個人事業主(法人成りも含む?)であって、本来労働法により保護を受ける立場にないフリーランスを、労働者と同様に保護しようとするものです。
この点は、不公正な取引方法を制限することを想定した下請法との関係で、あまり馴染まない内容ではないかと思われるところです。
(現行の下請法でもフリーランスは下請事業者に該当し得ますが、その場合に親事業者が就業環境を整備しなければならないとはしていません。)

以上から、今回のフリーランスに関する法整備においては、下請法を改正するのではなく、下請法とは別にフリーランスに関する法律を設けるのではないかと想定されます。

フリーランス向けの下請法改正について

www.nikkei.com

本日、日経新聞にて、政府がフリーランスを下請法(下請代金支払遅延等防止法)の保護対象とするよう下請法改正の調整に入った、との報道がありました。

現在においても、フリーランスが下請法上の下請事業者に該当する場合には、受託者がフリーランスであっても下請法の適用があります。
他方で、委託者が下請法上の親事業者に該当するための資本金要件を充足しなければ、他の要件を充足していてもフリーランスは下請事業者に該当しませんから、この場合には、下請法の適用はないこととなります。
(なお、独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の適用があり得ることには注意が必要です。)

そこで、今回調整が行われるとされる改正では、受託者がフリーランスの場合、委託者における資本金要件が撤廃されるとされています。
すなわち、委託者の資本金の額にかかわらず、委託者が親事業者となるための他の要件さえ充足していれば、フリーランスは下請事業者に該当し、フリーランスとの取引は、下請法の適用を受けることとなります。

したがって、法改正があった場合、委託者には、フリーランスとの取引において、下請法に基づき、いわゆる3条書面の交付義務や、代金支払遅延や代金減額、買いたたきの禁止等の11項目の禁止義務等が課せられることとなります。

また、フリーランスとの取引にのみ、そのような例外を設けることとなりますから、フリーランスの定義付けが法令上初めてなされると考えられます。
参考までに、2021年3月26日付で内閣官房等から出された「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」によれば、フリーランスの定義は、要旨、①実店舗がなく、②雇人のいない、③自営業主又は一人社長であって、④自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者、とされています。

この定義上、③からは、法人化(法人成り)した個人事業主フリーランスに含まれる可能性があることになります。
(③は、受託者が委託者との関係で労働者ではない、ということを裏側から表したものと考えられます。)
実態として、個人事業主個人事業主が法人成りした法人との間に実質的な違いはないと考えられますから、その点を反映したものと言い得るでしょう。
ただし、前記報道では「受託者が個人事業主の場合」に資本金要件が撤廃ということのようです。
とはいえ、改正内容がどのようなものとなるか、注視していく必要があると思われます。

ところで、委託者からすると、受託者が①や②を充足するか否かは、そもそも受託者に確認しなければわからない事項です。
改正後の下請法において、これらの内容がフリーランスの定義として要件化された場合には、取引前に①や②を充足するか否かの確認を行い、その旨を書面化することが必要になるのではないかと考えられます。

システム開発においても、プログラマ、デザイナー等、前述のフリーランスの定義に該当する受託者に業務委託をすることはまったく珍しくありません。
現在は資本金要件のために親事業者になることはないシステム開発事業者であっても、法改正により、親事業者として下請法を遵守しなければならない事業者が増加することが想定されます。
下請法違反に対しては、厳しい制裁条項も定められていますから(例えば、代金支払を遅延した場合の遅延損害金の利率は、民法上の法定利率よりも高い14.6%です。)、現時点で改正が確定したわけではないものの、改正に向けてしっかりと準備、対応すべきと思われます。

独立開業しておりました

1年以上ぶりと、だいぶご無沙汰の更新となってしまいました。

実は、2022年1月1日付で、以前所属しておりました事務所から独立しておりました。
現在は千代田区神田紺屋町にて、「野溝法律事務所」という私個人の事務所を開業し、弁護士業を行っております。
バタバタと手続やら業務やらに追われていたところ、あっという間に独立してから満8か月が経過してしまっていることに気づき、ただただ驚くばかりです。

ありがたいことに、独立してからもシステム開発を手がけているITベンダー様との顧問契約が増えておりまして、特にここ最近でホットなアジャイル開発の契約やラボ開発の契約、SES契約(システムエンジニアリング契約)等について、最新の情報等もお伝えしつつ、裏方として開発のお手伝いをさせていただいております。

そのようなこともあってか、現在も取扱業務はほとんど変わらず、①システム開発分野の契約書チェック、作成や紛争処理、②個人情報の取扱いの適法性を含めたリスクチェック(最近で言うと改正法対応が多い印象です)、③OSSをはじめとしたライセンスチェック、④Web上でサービスを提供している企業の利用規約、プライバシーポリシー、広告等の表示のチェック、といった業務がメインになっています。

そのほかですと、強いて言えば、広告代理店のクライアント様が複数社あり、広告基本契約や広告出演契約のチェック、作成等も日常的に行っているところです。

まだ今年も残っていますが、今年印象深かったご依頼のうちの1つをご紹介しますと、ゲーム開発会社様から、主にOSSと海外ソフトウェアのライセンスチェックのご依頼を、毎月20件ほど継続的にいただいておりました。
このお仕事は、同社様で利用されていた内部システムの取扱いも含め、私個人のソフトウェアの知識を非常に活かすことができたと感じられたお仕事でもありました。
GitHubを多少使い慣れていることもそうですが、ソフトウェアライセンスの探し方の勘所がなんとなくわかっていることも、まさに私向けの仕事だと感じるところでした。
(表向きにはライセンス条項がないか、実際のライセンス条項とは違うライセンス条項が置かれている場合に、実際のライセンスを見つけるようなこともしばしばありました。)

さて、現況はそんなところですが、やっと独立後の業務にも慣れてきて、余裕も出てきたところですので、頻繁に本ブログも更新していきたいと思っております。

システム開発に携わる企業様をはじめとする特にITに詳しい顧問弁護士をお探しの企業様、ご興味がございましたら、下記のURL先からお気軽にお問い合わせください。

it-vendor-law.com